えのぐがTIFに賭けるワケ

予防線はっておくぞ。個人の感想です。

TOKYO IDOL FESTIVAL 2022、通称TIFが終わりました。

筆者の推しことVRアイドル「えのぐ」は二度目の出場になります。オンライン、バーチャルTIFを含めたらもっとだけれど、彼女たちの意識の持ち方に準じるのであれば二度目と思っておいたほうがよい。

三年前、初めてえのぐがTIFに出場すると聞いた時。ぶっちゃけた話をしてしまえば、彼女たちがなぜこんなにもこのイベントに入れ込んでいるのか理解できていませんでした。そもそもがえのぐ以外のアイドルに興味がなかったため、TIFの存在自体その時に初めて知ったんです。なんかすごいイベントらしいけど、案の定VTuberの界隈ではまったくと言っていいほど話題になっていないし。

けれども、現地でその熱量に圧倒されて。そこで初めて「彼女たちが目指すもの、場所」をファンとして知ることができたと思いました。元々から"VRアイドル"を掲げていたえのぐをVTuberの文脈で語るのはズレが生じるのだけど、「配信活動よりライブパフォーマンスの向上に徹底注力する」という異質に思えた方針は、むしろ彼女たちにとっては、アイドルにとっては「当たり前にあるべき姿」で。本当に「歌って踊って」こその人々なんだなと思い知らされました。

けっこう前から、ライブのMCで決まって鈴木あんずさんが口にする言葉があります。「VRアイドルを当たり前の存在にする、その上で世界一のVRアイドルになる」。この言葉は決してふんわりしたスローガンではなく、具体的な目標であり、彼女たちのあらゆる活動はそのために行われている、と捉えています。そして、それを叶えるための大きな舞台のひとつがTIFである、とも。

VTuberのライブイベントって、基本的に「内輪」だと感じていて。「VTuberのための独自経済圏を確立・拡充しよう」って向きが強いと思っているんですよね。VTuber Fes Japanも、Life Like a Live!も、そしてバーチャルTIFも。それはそれで大切なことだし、こういったイベントに参加した時のえのぐが姿勢を変えているなんてことも当然ないのだけど、彼女たちが目指しているものとはズレているように感じます。

えのぐは「アイドル」という場の中で、VRアイドルと既存のアイドルが当たり前に並び立つ未来を求めている。バーチャルだからといって贔屓目に見られることも、ナメて見られることもない環境でトップを取りたいと、きっとそう考えている。

また、TIFはただの合同ライブイベントではなくて。今年えのぐも参加した「アイドル総選挙」や「メインステージ争奪LIVE」のように、争って、出演を勝ち取る企画まで用意されています。好戦的な目標を掲げているえのぐにとってTIFという舞台がうってつけなのは間違いがないわけで。ホントもう納得しかないよね。

今年の「総選挙」では惜しくも四位だったえのぐ。いつか頂点に立つ日まで、僕も応援を続けていきたいと思っています。

課題と感じたこと

会場だったHOT STAGEが……なあ……。客席から見ればさほど大きくないモニタと照明のみ、空っぽの舞台は客席との距離感をさらに広げてしまっているように感じてしまう。まさか初出場の時とまるで環境が変わっていないとは。出演は二度目でも、オファーは四年目のえのぐに対しここまでフォローがないとは思いませんでした。

三年前、丸茂マネージャーは「あえてステゴロで勝負しに行った(超意訳)」と語っていました。でも個人的には「えのぐだけが縛りプレイをさせられている」状態にしか見えませんでしたし、今回もそう感じました。彼女たちのパフォーマンスは最高なのに、舞台環境がそれを大きく、大変著しく目減りさせているなと。元々のファンである筆者は、ある意味で問題ではありません。これまでの経験からその目減りを「補正」することができるので。しかし、えのぐを知らない人の目にはどう映ったか。そんな人々が多くいる特殊な場で、大きな機会損失になってしまっているのではないか。

理想を言えばワンマンライブのように、設備を整えて彼女たちが舞台上に「立っている」ことができればなあ……と心底思います。

ただ、残念だったのは事実だとしても、そこまで悲観しているわけでもなくて。こういった環境問題の解決も「VRアイドルを当たり前の存在にする」ことの一環だと捉えています。そして彼女たちと、彼女たちの舞台に関わるスタッフは、既にそのために動いている。昨年から、そして今年にかけて本格化して多すぎるくらいの(主催が別にいる)対バンライブ出演は、既存のリアルアイドルとVRアイドルを併立できるイベント作りのための地道な経験積みでもあると思っています(勝手に)。本当に地道で、泥臭い努力。だからこそいつになるかはわからなくとも、やがては解決できるものだと信じています(勝手に)。