えのぐの「イレイザー☆ビーム」にわりと特別な思い入れがあるという話

明るく、ちょっと切ない恋愛ソングだ。いい曲であることはもちろんなのだが、「」や「LIVE Ⅳ LIFE」のようにえのぐ自身を語っているわけでもない、言ってしまえば"文脈"のない、特別でない楽曲であるとも言える。

だが僕はこの曲に"特別"を感じている。それだけの"文脈"がある。ただし、曲単体では推し量ることが難しい部分で。そこを少しばかり掘り下げていこうと思う。

えのぐにとっての2021年

2021年は、えのぐにとって"反骨"の年だったと記憶している。3周年ライブ「臨戦態勢」に始まり、常軌を逸した10daysライブ「遮二無二」、晩夏の「不撓不屈」と、四字熟語で統一された物々しいタイトル。依然コロナ禍にあって、なおも現地の有観客ライブにこだわり、パフォーマンスの向上に邁進し続けていた。対するえのぐみも、未だコールが許されない状況で、マスクの下で無言の応援を続けていた。

特徴的な新曲たち

Armor Break」、「Defiant Deadman Dance」といった"治安の悪い"新曲が目立つのも本年の特徴だ。高校野球テーマソングに選ばれた「BRAVER」も、土のにおいを感じさせる。えのぐの反骨精神を抽出したような楽曲が並んでいる。

総決算の冬ワンマン「雲外蒼天」

こういった各要素を並べてみても、2021年のえのぐは「泥くさく汗にまみれている」感が特に強いのだ。スマートさやスタイリッシュさとは無縁の、拳を握りしめ土を踏みしめて一歩一歩進んでいる感覚。そういったコンセプトの一年だったと思うし、実際にそのギラついた熱量が観客を魅了させていた年だったと思う。

その流れの果ての、年末のワンマンライブ「enogu one-man Live 2021 Winter - 雲外蒼天 -」。なんとこのライブ、全編がYouTubeで公開されている。未見の方は是非楽しんでいただきたい。

先述の"治安の悪い"新曲も含めた、熱のこもったセットリストとパフォーマンス。「Defiant Deadman Dance」で締めくくられた一旦のラストの後、アンコールにて「イレイザー☆ビーム」はお披露目された。

あまりのギャップに"やられて"しまった。キラッキラのポップな曲調、弾むような歌声。えのぐの"かっこいい"姿に酔わされていたところに、急に"KAWAII"をオーバードーズさせられたのだ。

ここでライブタイトルを思い出してみたい。

雲外蒼天

雨雲の上には青空が広がっている。今ある苦難もやがて去って良いことがあるだろうというたとえ。

まさに「イレイザー☆ビーム」は、たちこめた暗雲を突き抜けた先に見えた青空だった。霧中でもがき続けた2021年の、"その先にあるもの"。突然ぜんぜん関係ないアニメの話をするが、「真ゲッターロボ 世界最後の日」のOPを幻視したほどだった。

こんなやつ

気付けば僕はライブ会場で涙を流していた。まったくそんな曲じゃないのに(歌詞もうまく把握できていなかったので、切なさ要素は感じていなかった)。セットリスト、構成を考えたえのぐやスタッフ達に特大の賛辞を送りたい。この「イレイザー☆ビーム」をもってして、本ライブは「雲外蒼天」として完成していた。

そんなわけで

「イレイザー☆ビーム」が好き、というお話でした。こういうの、突然深夜に語りたくなるよね。